安達 保 スローンスクールと私のビジネスキャリア

MITスローンスクールを卒業して、早28年。しばらく縁遠くなっていたスローンとの接点が数年前から急速に回復し、今年長女が1年生として在籍しているのも何かの縁かと不思議に思っています。

正直、28年前のスローンでの生活が私のビジネスキャリアにどのように役に立ったかお話しするのは、決して優等生ではなかった私にとって苦痛な面もあるのですが、強いて言えば次の3点ではなかったかなと思っています。1番目は、スローンというビジネススクールでグローバルに通用する経営手法に触れ、その後自らそれを実践する機会を持てたこと。2番目としては、その一方で日本的な経営の良さや日本企業の強さ・カルチャーをグローバルな経営手法と融合させることの重要性を実感する原点になったこと。そして最後に、スローンの素晴らしい仲間と息の長い付き合いを始めるきっかけができたことです。

1.グローバルに通用する経営手法
私は、留学当時三菱商事からの派遣として、日本人留学生4人の中の1人としてスローンに在籍していました。卒業後三菱商事に復帰し、その後第二電電(現KDDI)に出向して同社の立ち上げに参画した経験を機に三菱商事を退職し、マッキンゼーで10年、GEキャピタルで6年の経験を経て、2003年からカーライル・グループの日本代表を務めています。その間、第二電電では当時の京セラの社長であられた稲盛さんの素晴らしい経営手腕に目からうろこが落ちる思いが致しましたし、また、GE時代にはジャック・ウェルチの言動に経営の真髄を見た気がします。しかし、それらには共通するものがあって、事業目標の到達に向かって厳しいデシプリンを持つ組織を作る一方で、優れた人材を育て・活かすことに時間の大半を使う名経営者の姿でした。それを、そのままスローンで学んだか否かは既に忘却の彼方となっていますが、少なくともその基本となる要素を学ぶことができたと同時に、名経営者が何を考えているか理解をする素地ができたように思います。

2.日本の事業慣習との融合
一方で私がGEに在籍していた時に感じたのは、GE流の経営がGEによって日本で買収された企業に必ずしもうまく受け入れられたかどうか疑問に思ったことでした。GEがもう少し日本のカルチャーを理解し、中長期での事業の発展を見据えてマネージメントを行っていれば、GEは更に日本でのプレゼンスを高め、維持することができたのではなかったかと思っています。

若干手前味噌になりますが、カーライルが今日本企業の成長をお手伝いするために行っている投資活動並びにその後の事業支援は、あくまでもグローバルに通用する合理的な経営手法を基盤に置きながら、日本企業固有の強さや企業カルチャーを重んじ、それらを融合させながら企業の成長を実現させることを目指しています。そのような投資方針を我々が持っているのは、もちろんカーライルが世界各国や地域の事業慣習を重んじるポリシーを持っていることが基本にあります。しかし更に言えば、私自身スローンという様々な国や経験を持った学生が集まり、お互いを尊重しあう風土を持つビジネススクールで、あまりぎすぎすした利益至上主義の経営ではなく、企業価値を真に上げるために何をすべきかを学んだことにもあるように思います。お蔭様でカーライルの日本での投資活動も10年を超え、国内で投資をした企業も13社に及んでいます。必ずしも成功したものばかりではないものの、少なからず企業の新たな経営基盤を作りグローバルに発展していく事業のお手伝いはできているのではと考えています。

3.スローンの仲間
スローンスクールというのは、皆さんも日々感じておられると思いますが、極めて人柄の良い人達の集団です。お互いを尊重し助け合い、少しおっとりしたところもあるかもしれませんが、友達として一生付き合うには本当に心地よい人達が数多くいる学校だと思います。皆さんが今一緒に席を並べ勉強している仲間は将来皆さんの大切なアセットになるはずです。勉強も大事ですが、ぜひその仲間との交流を大事にして、一生続く貴重な宝を今手に入れてください。

皆さんのスローンスクールでの成功を心から願っております。