Dean インタビュー

2008 年 11月 14日、MIT Sloan School の Dean (学部長)である David Schmittlein 教授にインタビューを行いました。

代替テキスト
Dean David Schmittlein
MIT Sloan School of Management


Q1. 日本を訪問した事がありますか?

過去何度も訪問しています。一番頻繁に日本に行ったのは1980年代です。マーケティングのスタディーの一環で、東京にある会社を訪問しました。その会社は消費者の購買パターンに関する素晴らしいデータを持っていたので、その分析を行ったのです。そんな経験から、カタカナも書けますよ。残念ながらひらがなと漢字はもう忘れてしまいましたけどね。

Q2. 先日、アジア各国を訪問されたそうですが、どのような目的で行かれたのでしょうか?

MIT Sloanの学部長として、東京・北京・香港・ドバイ・ソウルを訪問しました。その後ロンドンに寄った後、ボストンに戻ってきました。各国を訪問した目的は二点です。一点目は、各国のビジネスリーダーとなっているMIT Sloanの卒業生とお会いし、交流を深める事です。二点目は、米国を代表するビジネススクールとして、各国報道機関のインタビューを受けることです。日本でも二社の新聞社・雑誌社からインタビューを受けました。

Q3. 日本の卒業生コミュニティは、他の国と比べて何が違いましたか?

日本には当校の卒業生がアジアの他国と比べて格段に多く、コミュニティも充実していると感じました。これは過去継続的に、MIT Sloanが日本からの学生を受け入れて来た事の結果だと思います。

その結果として、日本には幅広い年代の卒業生がいるのも特徴です。MIT Sloanは数多くの日本を代表する大企業とも密接な関係を持っていますが、今回の訪問ではそういった企業の経営者となっている当校卒業生の皆さんとお会いする事ができました。卒業生の活躍ぶりを知る事ができたのは、大変誇らしいことでした。

一方、アジアの他の地域で今回お会いできたのは、比較的若い30代以下の方々でした。もちろん、どちらがいい、悪いという話ではありませんよ。ただ日本では本当にシニアの方から若い方まで集まってくれた点で、他国に比べて非常にユニークであり、且つ日本の卒業生コミュニティの厚みは、MIT Sloanの学部長として非常に頼もしく思いました。

Q4. MIT Sloanでは中国やインドにフォーカスしたクラスがあります(15.225 Economy and Business in Modern China and India)。一方、日本にフォーカスしたカリキュラムというアイデアはどのようにお感じになりますか?日本の企業は伝統的にオペレーションやテクノロジーに強みを持っているので、何かできるかもしれないと思うのですが…。

面白いと思います。
China Labの目的は、もちろん発展著しい中国に注目するという点もありますが、それ以上にMITの伝統である”Learning by doing”を実践する場、という側面もあります。この意味で、必ずしも中国を題材にする必要もないですし、それが日本であってもおもしろいと思います。

そもそもMIT Sloanのカリキュラムは、学校側が一方的に決めるのではなく、教授陣の意見と学生の興味を勘案の上決定しています。その意味で、当校の学生が一定以上興味を持ち、また日本企業から支援が得られるのであれば、新たに日本に注目したコースを設けることは十分可能だと思います。MIT Sloanはみなさんのやる気、アイデア次第で色々な事ができるのが出来る場ですので、どんどんアイデアを出していって欲しいと思っています。

Q5. MIT SloanとWhartonという、二つのトップスクールをご存知なわけですが、学部長として感じておられるMIT Sloanの学生の強みを教えてください。

その点はよく聞かれますので、簡単にお答えできます。

一般にMBA、特にトップ校には、似通った能力・バックグラウンドの学生が集まっていると思われがちです。例えば合格者のGMATスコアや、出身地域(約40%が米国外)などを見るとそれが分かります。

しかし、実際よく観察してみると、学校ごとに学生の気質はまったく違うものです。私の見たところ、MIT Sloanの学生は『なぜMBAに行くのか?』を自分でよく考えた上で入学して来ている学生が多いと感じます。別の言い方をすると、MIT Sloanは”MIT”という世界に冠たるブランドを持っているにも関わらず、その学生の中に「ブランド」を求めてやって来ている人は少なく、より実質的な学びを重視する人が多いようです。

この傾向は、MIT Sloanがよりよいコミュニティを作る上で非常に大きな強みです。例えば、「ブランド」を求める学生が多い場合、どうなるでしょうか?私の経験では、ブランドを求める学生は入学金を支払ったときが到達点であり、入学後の授業を含む様々な活動に消極的なものです。このような学生が多いと、学生同士から学ぶというビジネススクールにとって非常に大事な要素が弱くなってしまいます。一方、私はMIT Sloanでそのような学生には今まで出会ったことがありません。授業にも課外活動も積極的に関わり、かつ突き詰めて考える事が得意な人たち、それがMIT Sloanの学生像だと思います。

ところでなぜそのような学生がMIT Sloanに集まるのか、ですが、その秘密はアドミッションプロセス、特にインタビューにあります。ビジネススクールのアドミッションインタビューでは、在校生や卒業生がインタビュアーとして面接を行うのが一般的です。それに対してMIT Sloanでは、アドミッションのプロフェッショナルスタッフが全てのインタビューを行っています。実は、全ての受験生に対してアドミッションスタッフが対応しているトップ校は全米で当校含め、二校のみです。

他にも様々な要素がありますが、間違いなくこの徹底した選考方法が、MIT Sloan在校生の特徴、また学校の文化を生み出しているのだと思います。

Q6. 逆に、MIT Sloanの弱みとしてお感じの点があればお聞かせください。

もちろんMIT Sloanにも弱みはあります。例えば、MIT Sloanが比較的小規模校である為、特定の分野で他校よりカリキュラム数が少ない、といった点です。不動産の分野を例に挙げますと、とある他のトップスクールが準備している教授・授業数はMIT Sloanの数倍であり、カバーする範囲も広い、という事実があります。

仮に我々がこれを解決しようとした場合、唯一の方法はMIT Sloanを大規模校にするしかないと思っています。他のトップ校は年々合格者数を増やし、今や一学年800人を超える規模となっています。そうする事で教授や授業の数を増やしていっているわけです。一方、MIT Sloanの一学年の規模は、その半分にも及びません。

しかし私は、学部長として大規模化を進めるべきではないと思っています。その主な理由は、やはり小規模でいる事には換え難いメリットがあるからです。先ほどのお話と関連するのですが、MIT Sloanは当校の強みをより磨いてくれる学生達を選び抜いて、合格を出しています。そうすることで在校生一人一人が、素晴らしい同級生から他では得られない貴重な学びを獲得できると思うからです。全米に何百とあるビジネススクールの中で受験倍率が10倍を超えるのは二校だけです。当校はその一校です。私は学生一人一人の二年間をより充実させるには、少数精鋭にこだわる事が重要ではないかと考えています。

その一方で、私はより幅広い分野を体系立ててカバーする事はビジネススクールにとって大事な事であると思っています。その為に、当校は様々な工夫をしています。例えば今大きく動こうとしているファイナンスの分野では、既存のプログラムを体系立てたファイナンス・トラックを今年から設けました。また従前より当校が強みを持っているアントレプレナーシップの分野でも、E&Iというプログラムで学生が起業に関わるスキルを磨く場を提供しています。このように常に時代の要請に合わせてカリキュラムを見直す工夫をすることで、大規模校に負けないプログラムを提供していきたいと思っています。

Q7. では、MIT Sloanは定員数を今以上に増やす事はないと?

もちろん、何事にも「絶対」ということはありません。定員数の話もそうです。ただプログラムの充実を図る上で、私は今その必要性を感じないという事です。

例えばリクルーティングにおいて、企業側が効率の観点から大規模校でのリクルーティング活動を優先し、MIT Sloanを含む小規模校に来なくなるといった事態が起これば、当校も定員を増やす等して企業の要請に応える必要が出てくるかもしれません。しかし、今のところそのような兆候はありません。皆さんもご存知のように、当校にはダイナミックに成長する世界中の企業がリクルーティングの為に必ず足を運んでくれる、数少ないトップ校の一校です。これは当校の輩出する人材が世の中で認められ続けている証でもあります。私達はこれからも企業側の期待に応えて優秀な人材を育てていきたいと思っています。

Q8. 今回のインタビューは、私達ジャパン・クラブの企画です。ジャパン・クラブは、学内でも最大級のトレックやC-Functionを毎年行っており、MIT Sloanのクラブの中でも最も活発に活動するクラブであると自負しています。

同感です。日本人学生は、国際色の高い当校の中で特に活発にコミュニティに貢献している、貴重な存在だと思っています。

私が感じる日本人学生の特徴は、非常に思慮深い人が多いという事です。もっとも、これは恐らく日本人一般に言えるのでしょうね。というのは、先ほどMIT Sloanの学生には他校と比べて深く考えるタイプが多いと言いましたが、日本人学生に限って言うと、私の知る限り他校のビジネススクールの日本人学生にも、物事をきちんと分析するタイプの人が多いからです。

また冒頭に、日本における卒業生ネットワークの存在についてお話ししましたが、その関連でもう一つ大事な事がありました。それは、我々の卒業生ネットワークはMIT Sloanの卒業生だけでなく、MIT全体の卒業生から成り立っているという事です。現に、日本ではMIT卒業生の会が活発な活動を行っており、学部・専門を超えた交流が行われています。これは当校の日本人学生の皆さんにとって、非常に大きな資産だと思います。

本日はお忙しい中貴重なお話をいただき、ありがとうございました。